埒外の世界　part07

【主寝室】

広い居室で、壁には様々な絵画やタペストリーが飾られており、立派なベッド、小さめの本棚、大き目のクローゼット等が置かれている。 また、長机も置かれており、その上には様々な置物があるが統一感は無い。 熊の木彫り、古びたランタン、トーテムポールを模した土産品、そして写真立てなどである。 写真立てには、少し昔の物らしいが木賀姉妹が映った写真が入っている。

金庫中には3つの物品が収められている。

・1つ目は拳銃である。
　弾薬は入っておらず、使われた形跡もない。
・2つ目は弾薬箱である。
　全部で6発がケースに収まっている。
　弾薬の表面には謎の紋様が描かれている。
　弾薬箱の裏側には『対サンプル用』と書かれている。
・3つ目は古ぼけた一枚の羊皮紙である。
　以下の内容が書かれていた。
『P.M　Elder Things：number of pages』
『L,R,L,L』

【主寝室の本棚】

豪奢な部屋に似合わず、そこにあるのはTRPGのリプレイ本等である。 しかし、『簡単！自宅でイルミネーション！』という毛色の違う本が一冊だけ紛れ込んでいる。 その本に一枚のメモ書きが挟まっており、『電源の設置場所候補……タチアオイ』と走り書きされている。

【脱衣所】

まるで温泉宿のような、広い脱衣所である。客人用のタオルや石鹸、櫛なども揃えているようだ。高性能そうな洗濯機が置いてあり、これが無ければ旅館に来たのだと勘違いしてしまいそうだ。

【浴場】

館の主が自慢するだけのことはある。広く、そして美しい浴場であった。精巧な石造りの浴場であり、一部に経年劣化が見られるものの、良く手入れされている。

【洋室】

ここは木賀姉妹の居室である。2人分のベッドと机、クローゼットが置かれている。それぞれの性格が良く出ており、綺麗に整っている方が想、そして少々散らかっている方が廻のスペースだと容易に予想できる。

【想の日記】

8月15日
今日は庭の手入れをした。 代父さんが近日中にイルミネーションを設置する予定らしい。 派手になり過ぎなければよいのだけれど……。 廻が勝手に館内の鍵を持ちだすので、対策に鍵の保管場所を変えることにした。 机の裏側にフックを取り付けて、そこに引っ掛けておこう。

8月16日
食事の最中にまたあの日の事を思い出してしまった。 もう13年も経つというのに。廻にも心配ばかりかけている。 忘れようとしてもどうしても忘れられない。 未だに考える。お父さんとお母さんはどうして私たちを捨てたりしたのだろう？　 古ぼけたバスの停留所だった。 お父さんは「ここで少し待っていなさい。すぐに戻るから」と、そう言って離れて行った。 それっきり二度と戻ってくることは無かった。 今は何処で何をしているのだろう。 あの大きな掌で、誰の手を握っているのだろう。

8月17日
代父さんの友人、本条さんが館に泊まりにきた。 一言で表すならまさに「好青年」という感じの人物だった。 代父さんとワインの話で盛り上がっていた。TRPGの関係者じゃないのかな？　 本条さんは父と一緒にいないときは館内を散策していた。 バッタリ会った時に「この館は地下室があるのか？」と質問された。 確かにあるけれど、ジメジメとして環境が悪いから リフォームも諦めて現在は未使用の状態だ。 何故そんなことを気にするのだろう？　建築に興味があるのだろうか。 なんだかちょっと不思議な人だな、と思った。

扉の向こうにいたのは、一人の見知らぬ青年だった。青年は粘液に塗れ、その身体は腐り、垂れ下がった肉の隙間から、真っ白な骨が顔を覗かせている。ホラー映画では定番の存在だが、実物を見るのは初めてだ。『ゾンビ』と、そう呼称すべき悍ましき化け物が、腐臭をまき散らしながら、部屋へと押し入ってきた。

【多弁症】

あなたは恐怖から感情が吹き出し、早口で支離滅裂な内容を叫び始める。まともな意思疎通は困難となり、自分の思うことを一方的に喋り続ける。自分が起こす行動に制限は無いが、他人の指示は受け付けなくなる。