埒外の世界 part01
季節は夏。
夏!!
8月18日のこと。すっかり日も長くなり、
橙色の夕日が山際を照らし出している。
舞台は郊外の小さな森である。小川のせせらぎと、
日暮の鳴き声だけが木霊している。
日暮の鳴き声ってどんなのだっけ?
砂波さんやって?
ヒグラ……いや無理だ。
ツクツクボウシみたいのしか思いつかない。
ツクボーシツクツボーシツクツクツクツクビー。
探索者達はこの森の開けた場所に建つ『木賀 代(きが かわる)』という男性の屋敷を目指している。
木賀家はこの辺り一帯の大地主である。森の中に大きな館を所有しており、代々そこに暮らしている。
あなたたちは本人に直接誘われたり、間接的に友人から誘われたりときっかけは様々だが、今宵は彼の主催するパーティに招待されたのだ。
何を祝ってのパーティなのかはまだ聞かされていないが、彼のことだ。何か愉快な企てを持っているに違いない。
期待に胸を膨らませながら、あなたたちは木賀邸を目指している。
みんなお互いに面識ないけど、
指定された集合時間は同じなので、
来る途中でばったり会うかもしれません。
知り合い設定を生やしてもいいけど……。
と思ったけど無理そうかな。
繋がりが思いつかないな。
山の民とは無理だ。*1
山の民は無理。
まあわざと早く来たり遅刻したりする人はいない
だろうからたまたま同じ時間に来るってことで。
じゃないと処理が大変……。
たまたまね。
バスとか公共交通機関を利用したならそんなに
不自然じゃない。森があるくらいだし便少なそう。
あー、なるほど。
まだ屋敷についてないくらいだけど、
こっちの方面に歩いてるってことは参加者だろうな
ってお互い気づいてOKです。
今この場にいるのは探索者のほかに
バーナビーを誘ったNPCが1人います。
女性で、名前は
今井千奈(いまいちな)。
いまいちなのか。
その名前いいなぁ。
だいたい大学生くらい。
20歳だって。
外見からわかる情報としてはAPPが13で、SIZが9。
ちっちゃ! 平均が13だからだいぶ小さいな。
千奈のメタ的な紹介ってみんなにした方がいい?
好きにしていいよ。
じゃあする。
【今井千奈】(バーナビーの人が公開した情報)
・彼女は引っ込み思案で人見知りだが、
自分の趣味の話だと途端に饒舌になる人種である。
・TRPGの大ファンである。
・押し花も趣味の1つで幼い頃からやっている。
ゲーム内では誰も話さなくていい?
砂波さんはコミュ力あるみたいな設定ボソッと
言ってなかったっけ?
まあそうだけど、話すかなー?
僕中学生キャラだよ。子供が1人で歩いてます。
なら声かけるか。
「こんにちは、
もしかして君もあのパーティーに行くのかい?」
「そうです。あなたもですか?」
「ああそうなんだよ」
千奈って僕の横にいるんだよね?
じゃあ、
「あの人たちもパーティーに行くみたいですね」
って千奈に言ってから2人に近づいていく。
じゃあ千奈も一緒についてきます。
「こんにちは」
「あ、もしかしてあなたもですか?」
「そうなんですよ。
みなさんもパーティーに行かれるんですか?
いろんな年齢の方が来るんですね」
「まあそれくらい木賀さんの交流範囲が
広いってことでしょうね」
何のパーティーなのか知らないんだよね?
ホームパーティー?
ホームパーティー的なものだろうけど、
何を祝うためのものなのかを知らないって感じです。
「ボードゲームとかTRPGとかたくさん
持っているらしいし、そういうこともやるかもな」
「皆さんは木賀さんと直接お知り合いなんですか?」
「そうだね」
「僕は違うんですけど、
こっちの彼女が知り合いなんですよ」
「ど、どうも、今井、千奈です……」
「僕も木賀さんとは面識がないんです」
「じゃあどうしてまた?」
……これどういう風に言えばいいかな。
親の仇。
「姉のように仲良くしてくださった人が木賀さんに
5年くらい前に引き取られて、
その人たちに今日は誘われたんですよ」
「なので木賀さんとは面識がありません」
そのお姉さんたちと俺は面識ある?
面識はないけど木賀さんから話は聞いてます。
大学生と高校生の娘ということも知ってていいです。
「じゃあ5年ぶりの再会って感じですか?」
「いえ、何度か会ってはいるんですが、
家に遊びに行くのは初めてなんです!!」
「よかったですねぇ」
「あ、そうだ。
僕はバーナビー・ボールドウィンといいます」
「え? 外国人の方ですか?」
「ハーフなんですよ。日本語も大丈夫なんで」
「僕は二西碧(にさいあお)といいます」
その名前の由来、青二才でしょ!*2
そうだよ。全然名前思つかなくてモジった。
すごくいいと思うよ。*3
「砂波一晴(さばいはる)といいます。
木賀さんとは結構仲良くしてもらってて、
二西くんのお姉さんの話もたまに聞いてました」
今って何時くらい?
19時前くらいかな。
パーティーは20時くらいから。
泊まりなんだっけ?
泊まり泊まり。
じゃあチェックインがちょっと早めみたいなものか。
探索者たちはTRPGってするのかな。
参加したことは無いけど木賀代と仲いいから
聞いたことはあるくらい。
TRPGを知ってるか<知識>で判定していい?
いいですよ。
<知識>
二西碧 75>74〇
ギリギリの成功だったから聞いたことある程度かな。
「さっきTRPGとか言ってましたけど、
砂波さんもされるんですか?」
「全然やったことないですけど、
木賀さんから話は結構聞いてますよ」
「TRPG楽しいですよ!!」
と話に割り込んできます。
「あ、そうなんですか?
じゃあもしかしたら今日やるかもしれませんし、
一度やってみたいですね」
千奈はめっちゃ笑顔で頷きます。
オタクにやってみたいとか言っちゃダメ。
食いつきが(笑)
じゃあなんかこう、千奈を抑える。
襟首をつかんで抑える。
(笑)
暫く歩くと木賀邸が目の前に現れる。
大きな館ではあるが、森との調和を乱さないよう、落ち着いた配色、最小限の装飾で造られている。
街の喧騒から離れたこの場所は、木賀の性格に相応しい住処であるように思えた。
玄関にはチャイムなどは無く、
趣のあるドアノッカーがついています。
あのカツンカツンってやるやつか。
あなた達はノッカーを鳴らし、
館の住人が扉を開けてくれるのを待つことにした。
全員<アイデア>振って。
<アイデア>
砂波一晴 | 90>40 | ○ |
二西碧 | 55>84 | × |
バーナビー | 75>81 | × |
では成功した人。
あなたは誰かに見られているように感じる。
視線の送り主を探して周囲を見渡すと、
館の2階の一室にだけカーテンが
かかっていることに気がつく。
あそこから誰かが見ていたのだろうか。
もしや、木賀の悪戯だろうか?
山の民は視線には敏感。
サバイバルにはいい感じ。
僕は気づかなーい。
僕はまあ……TRPG界の狂犬を抑えていたから……。
他の人に情報は共有しません。
いたずらだろうかって描写あったし、
いつも通りって感じなんだろうな。
しばらくすると、館の大きな扉が開かれる。
そこにはまだ学生くらいの年頃だろうか、
2人の少女が立っていた。
片や、落ち着いた雰囲気で、
髪を結った端正な顔立ちの少女。
片や、活発そうな雰囲気で、探索者達を
興味津々という風に見つめている少女である。
「想姉ちゃん、廻姉ちゃん久しぶり!」
「碧くん久しぶり」
「やっほー! 久しぶり碧っち!」
碧っちなんだ。
別の呼び方のほうがよかった?
いやそれでいいよ。
雰囲気出てていいと思う。
「2人とも元気にしてた?」
「元気にしてたよ」
僕ら水差すの悪いな。
再会を喜んだあとは他の人たちに挨拶します。
想は礼儀正しく、
「父がいつもお世話になっております」
とか丁寧に挨拶する一方で、廻は
「オッス! いやー、父さんもこんなに若い人と
友達なんて……『木賀代』改め、
『気が若い』だね!」
とハイテンションかつタメ口で絡んできます。
そんな妹の態度に姉である想は平謝りします。
やべぇ、22歳なのに最年長になってしまった。
まあ木賀代がいるから大丈夫か。