万夜一夜 part06
【指令室】
指令室と書かれた部屋に入ると、
一番奥に設置された、いかにも司令官が座りそうな椅子の隣で、
粗末な椅子に腰かけたジェシーが、虚空に向かって聞いたことのない言葉で話していた。
やばそう。
ジェシーはあなたたちに気づくと、
暗い顔をしながら話しかけてきます。
「……仮の話をしましょう」
「皆さんは、仮に大切な人が亡くなったとして、
困難だけれどそれを無かったことにできるならば、
成し遂げたいと思いますか?」
「もちろん」
と即答します。
「……やはりそうですか」
「実は仮の話ではないのです。
皆さんの大切な人は亡くなりました」
「飛び散った破片が直撃したようで、
出血がひどくて、発見したときにはもう……」
「仮の話ではないというのは
『無かったことにできる』
ということも仮ではありません」
「理論上はできるはずです。
私は60年以上そのための装置を研究してきました。
まだ完成はしていませんが……」
「皆さんに協力いただければ、私の寿命が来る前に
完成させられると思うのです!!
どうか協力してください!!」
と、真剣な顔で伝えてきます。
大切な人を失ったことを知ったあなたたちは
SANチェックです。
今までの様子からこれは受け入れるしかないなって
感じなんでしょ? もう無理だよ!
SANチェックしましょう!
<SANチェック>
二西碧 | 52>98 | × |
繭取順二 | 56>13 | ○ |
今城結衣 | 87>14 | ○ |
藤崎帆波 | 59>69 | × |
なんか成功しちゃった……。
成功してしまった……。
98って!!
POW18でも失敗するわ!!!!
なんかテンション高いな(笑)
やけっぱち感がある。
成功した人は1d4、失敗した人は1d8。
よーし、境遇的に5は減るよ!!
そーれ!
<SAN値減少量>
二西碧 1d8→1
繭取順二 1d4→2
今城結衣 1d4→4
藤崎帆波 1d8→7
1…………。
あっはっはっは。
減らしたいなら好きなだけ減らしてもいいよ?
なら僕はあと3くらい減らしておこう。
いいよ。
やったー! じゃあ<アイデア>ロールしよう!
…………。
発狂せずに終わったの!?
この流れで!?
どうしようかな、無言で涙を流すとか?
帆波さんの発狂が落ち着くまで進行は待つから
好きに演出してもらっていいよ。
「嘘だろ!? 海帆!! そこにいるんだろ!!
そんなの信じられるかよぉ!? 夢だろ!?」
海帆は帆波と同じ症状で発狂しています。
僕はどうしようかな。
好きにしていいよ。
助けられることに気持ちがすっごく寄ってると
解釈すれば別に1でも変じゃないんだよね。
魔術とかの存在は知ってるし。
なるほどね。
<現在SAN値>
二西碧 52→51
繭取順二 56→51
今城結衣 87→83
藤崎帆波 59→52
「ジェシーさん、方法があるんでしょう?
早く教えてください!」
自分から喋った!!
では帆波さんも落ち着いた、
ということでジェシーが話し始めます。
「まずは皆さんが置かれている状況について
説明致します」
「本は読んでいただけましたか?
古今東西、夢に関する知見は変わりません」
「何故かといえば、それは一部真実だからです。
夢の中は現実よりも時間の流れが速いのです」
「信じられないかもしれませんが、
今、私たちは夢の世界にいます。
ここで1年経とうが現実世界では数分です」
「たった数分なので、ここでの食事や睡眠は
可能ですが、生きる上では不要です」
「私たちは同じ夢を共有している状態です。
しかし、夢の中で作ったもの以外の、
現実で存在しないものは共有できません」
共有できないって具体的にどういうこと?
現実で存在しないものは、
例えば、死んでしまった人とかですね。
「そこに見えている皆さんの大切な人は、
幻なのです」
【まとめ】
・私たちは夢の中にいる
・夢の中は現実より時間の流れが遅い
・食事や睡眠は不要
・共有できるのは
『現実に存在する』or『夢の中で新たに作った』
・大切な人は個別に見ている夢だから共有不可
「簡単な状況説明は以上で終わりですが、
何か質問はありますか?」
大切な人が死んでしまったところまでが現実?
そうです。コテージで目覚めたところからが夢です。
他に質問無い?
ではこれからの説明をします。
「開発室にあった黒い三日月状の物体を
ご覧になりましたか?
あれの名前はカロンといいます」
カロン……冥王星の衛星……。ユゴス……。*1
「信じられないかもしれませんが、
カロンには時空を超える力があります。
……完成すれば、ですけど」
「時空を超えて、過去へ移動して、
皆さんの大切な人を助けることができるはずです」
「とは言え、カロンの組み立てには専門的な知識が
必要となりますので、すぐに手伝ってもらうのは
無理だと思います」
「ですので、しばらくは材料集めを担当して
貰おうと考えています」
すげーなー。
夢の中で何年暮らすんだろこれ。
史上最長じゃない?*2
ホントにな!
「カロンにはアニミークリという
特殊な鉱石が必要なんです」
「あ、あに?」
「アニミークリです」
「幸い、現在作業のボトルネックになっているのは
採掘なんです。もう私も100歳近い高齢なので
採掘はかなりの重労働で……」
「ですので、組み立てまで手伝ってもらわなくても
作業は大幅に進むようになります」
「夢なのに動くのが辛いんですか?」
「それは基本的に現実と変わらないですね。
違うのは食事と睡眠が不要なくらいでしょうか」
「必要な道具は採掘場に置いてありますので、
アニミークリを掘り出したら物資保管室に
保管してください」
「カロンは現在三日月みたいな歪な形をしてますが、
最終的には満月のような真球になる予定ですよ。
一緒に頑張りましょう」
といって説明を終わります。
何か質問ありますか?
「私たちはただ掘り出していればいいんですよね?」
「そのうち組み立ても手伝ってもらうことになると
思いますが、直近に関してはそうですね」
「まずはアニミークリについて知ることから
始めましょう」
「恐らく作業はとても長い時間がかかると思います。
無限に続くかのような作業に絶望したりするかも
しれません」
「食事や睡眠は不要だと先ほどは言いましたが、
人間的な生活をすれば不安も緩和されるでしょう。
どうしますか?」
人間的な生活とは……。
単純に食べて寝るだけですね。
ちなみにジェシーはしてないです。
一刻も早くって思うか、
正気を保ち続けるために時間をかけるか……。
すべてが終わった後、正気を保ったまま
もう一回会わなきゃいけないから……。
お腹って空くのかな?
お腹は空かない。食べれるけど。
まあ、食べたり飲んだり、寝たりしましょう。
「そういえば朝食がまだですね。
皆さん、コテージへ戻ってご飯にしましょう」